顧客体験の教科書


以前購入して積読していたものを時間ができたので読んでみました。
カスタマージャーニーの設計に関連していて、大変興味深かったです。
日本の「顧客」に対する応対よりも、考えが進んでいるように感じました。

興味を持って読んだ点は色々とあったのですが、下記は特に気になりました。

サイレントクレーマーではなく、苦情を教えてくださる顧客の方がありがたい存在ということの認識があるか、どうかで対応が分かれるのだと感じました。

第2ステップは、顧客をサービスにアクセスしやすくするための環境整備である。ここは多少受け入れにくいステップかもしれない。経営者の多くは、苦情と問合せの件数をできるだけ減らしたいと考えている。しかし、実行すべき戦略は逆であり、「トラブルは教えていただかないと解決できません」という企業メッセージを前面に打ち出し、顧客には苦情を積極的に申し出てくれるようにお願いすべきだ。

カスタマーエクスペリエンスを提供する従業員というよりは、経営者側の意識変革が必要だという指摘だと感じました。

優れたCXを提供するうえで最大の難関は、経営者は自己満足から抜け出すことだ。経営者のほとんどは自社のCXに満足しており、経営や決算に与える深刻なダメージに気づかないでいる。
本章では、まず独りよがりな状態から目を覚ましてもらうことをめざしたい。CXの現実を認識し、よく考えてほしい。意外に思われるかもしれないが、最も重要なのは次の5点である。
①顧客の事前期待を理解することは比較的簡単だが、その事前期待を満たすことは考えているより難しい。
②顧客の不満の原因は、従業員ではないことが多い。
③顧客が何も言ってこないのは必ずしも良いことではない。苦情件数が少ないからといって、優れたCXを提供できているとは限らない。
④自社の現状のCXをそのまま放置していると、相当な収益を損失することになる。これを回復することは不可能ではない。
⑤テクノロジーは企業やCXに対する顧客の事前期待のあり方を変えたが、テクノロジーを効果的に使えば、とても安い投資だということに多くの経営者は気づいていない。

残念な商品・サービスに対する不満は、顧客サービス部門へぶつけられるため、誤った評価を行ってしまうということだと感じました。本来は商品・サービスを改善すべき内容であるにもかかわらず、顧客サービス部門の応対が不十分ということで悪い評価の発生源が顧客サービス部門になってしまうということだと感じます。私の勤めている会社でもカスタマーセンターの従業員へのフォローが不足しているのだろうと感じました。

顧客の事前期待や製品の問題について、顧客サービス担当者が責任を負うわけではないが、顧客の怒りの矛先は顧客サービスへ向かうことになる。皮肉にも、顧客が事前期待が外れたと感じるのは、マーケティングや営業のコミュニケーションに起因する場合が多く、製品・サービス自体の欠陥よりも、不満やロイヤルティの低下につながりやすい。なぜなら、顧客は意図的に騙されたと感じてしまうからだ。顧客が騙されたと感じた不満は、顧客サービス担当者のミスや製品欠陥に対する不満の2~4倍もロイヤルティへのダメージが大きいという調査結果がある。

これは、私が関わる新規事業の立ち上げと同じ問題が関わっているのだと感じました。新規事業では低収益であるため、既存事業と比較して事業継続することが難しい場面に多々出会います。
下記の話は、CXを強化したいという提案が収益面を理由に受け入れがたいということだと思います。長期的な収益性をいかに示していくかがCX担当者のカギとなるのだと感じますが、結局は経営側に受け入れる準備ができているかで決まる気がします。

CXを強化したいという提案も、説得力のある説明材料を準備しない限り、財務担当者には潰されてしまうかもしれない。収益性強化という成果はすぐには数字に表れにくいため、CXへの投資を出し惜しみして、結局は大金を失っているケースが多い。結果として、短期的な効率性アップや経費削減ができるプロセス改善に取り組みやすく、顧客ロイヤルティや長期的な収益性を確保するための道を閉ざしている企業をよく見かける。

クチコミのネガティブとポジティブの広がり方の違い・・・・・・クチコミの広まり方に関する最初の発見は1978年に実施したコカ・コーラ社での調査結果によるものだが、「消費者は嬉しかった体験を伝えるときより、嫌な体験を2倍多くの人に伝える」という事実は、最近の調査でも変わらない結果が出ていることがわかった。驚くべきことに、この比率はBtoBの取引の場合でも変わらない。

下記はその通りだと感じます。いかに続けることが難しいことか、改めて考えさせられます。

多くの企業にとって、長年にわたって繰り返される問題は、CXや顧客を大切にするという方針は成長期や利益が出ている時期には盛んになるが、財務的な危機や組織が大きく変動する時期、CX指標が予想どおりに上昇してこない場合には、活動が急停止してしまうことが多い。

「グッドマンの法則」を久しぶりに目にしました。古い調査結果ですが、今でも、いや今だからこそ重要な観点である気がします。

当時、消費者関連専門家会議(ACAP)の理事長だった佐藤知恭氏がその調査報告書を読み、日本で「グッドマンの法則」として紹介した。それが次の3点である。
第1法則:不満を持った顧客のうち、苦情を申し立てその解決に満足した顧客の当該商品の再購入決定率は、不満を持ちながら苦情を申し立てない顧客のそれに比較してきわめて高い。
第2法則:苦情処理に不満を抱いた顧客の非好意的なクチコミの影響は、満足した顧客の好意的なクチコミの影響に比較して2倍も強く販売の足を引っ張る。
第3法則:企業の行う消費者教育によって、その企業に対する消費者の信頼度が高まり、好意的なクチコミの波及効果が期待されるばかりか、商品購入意図が高まり、かつ市場拡大に貢献する。

カスタマーエクスペリエンスの設計よりも、運用面で継続していくことや改善を続けることがいかに難しいのかを教えてくれた本だと思います。折を見て読み返したい本だと感じました。

投稿者: admin

地方に生まれ、地方で育ち、地方で働いていた田舎者です。 数年前に首都圏に転勤しマーケターとして働いています。