「欲しい」の本質 人を動かす隠れた心理「インサイト」の見つけ方

気になっていた本を読みました。読みやすい本なのでサクサク読めました。

本書におけるインサイトの定義は、「インサイトとは、「人を動かす隠れた心理のことです。」です。
定義を決めることの重要性は、修士論文を書いている今だからこそ感じることかもしれません。
本書では、大体いいんじゃないという商品・サービスが溢れている現代だからこそ、インサイトを活かしてイノベーションを起こす必要があると述べているのだと感じます。

インサイトは、「顧客を動かす隠れた心理」です。ですから、消費者自身も気づいていない、隠れた状態になっています。一方、ニーズは「本人が明確に認識できている欲求」で、顕在化しています。

何をファクトとするかは置いておいたとして、ファクトとエモーションを両方押さえたものが良いインサイトとしているのは、その通りだと思いました。

このように、人を動かすアイデアを導くためには、その「感情」が生まれる要因となった「事実(ファクト)」が必要です。アイデアをつくるためには、「事実」が「感情」とセットになって初めて意味のあるインサイトになります。

下記の関係性はわかりやすいフレームだと思いました。

キーインサイトは、前に「隠れた不満や欲求のエッセンス」と説明しました。その上で、次に挙げる3点が要件となります。①バリュープロポジションを産み出し、充たし充たされの関係が成立していること②「不満」または「未充足欲求」のエモーション(感情)と、他の要素の組み合わせで構成れていること③②の他の要素とは、シーン(場面)・ドライバー(源泉要因)・バックグラウンド(背景要因)」のいずれかひとつ以上であること

「インサイトを明らかにする方法」として下記のことが書かれていました。
私自身はファクトベースでインサイトを得ることが多い気がしますが、エモーションも心の中でセットで考えている気もしました。改めて自らのスタイルを振り返ってみたいと感じました。

感情(エモーション)からのアプローチ→心理学系・ビジュアル刺激法・文章完成法
事実(ファクト)からのアプローチ→文化人類学系・行動観察(エスノグラフィ)・ソーシャルリスニング・コミュニティリサーチ(MROC)

学部生の時代の一般教養科目で好きだった文化人類学ですが、下記で「文化人類学に基づく事実からのアプローチ」として書かれていることは私も近いことをしていると感じました。なんとなく「あなたにとってどんな意味?」と日本人に聞くのはあまり効果的でない気がしました。海外で発展しているマーケティング用語等は日本語にすると釈然としない感じがするのと同じ感じを受けました。

行動を再現した後の質問では、「なぜそうするのか」と直接的に聞くのではなく、「あなたにとって、そうすることはどのような意味があるのか」といったことを確認するほうが重要です。
(中略)
あるいは「そのようにしないとどんなマイナスがあるか」を聞いていくのもよいでしょう。

あとがきに書かれていたこの数字は全体感を知っておくために把握しているとよいと思います。あくまでも個別企業のためにマーケティングするので全体感は必要ないかもしれませんが、木を見て森を見ずということは片手落ちになってしまう気がするためです。

日本国内で使われている研究開発費は年間約19兆円、マーケティング予算の中で最も大きな割合を占める広告費には約6兆円が使われていると言えれています

インサイトについて簡単に知るには良い本だと思います。

投稿者: admin

ITエンジニアでキャリアをはじめ、SEやプロマネとして働いた後にマーケターとして新規事業開発などで働いていました。現在は経営戦略室で勤務しつつ、経営コンサルタントとしても活動しています。 詳細な自己紹介はこちらへ。