G.Wのゆったりした時間を使って、積読本を読みました。薄い本なのでサクッと読めます。
私自身は、ブランドとは積み上げられたものが振り返ってみると形や意思になっていて、顧客から認知されるようになったものという風にとらえています。楠木先生が言っている「ブランデッド」と同じ解釈だと思います。
では、ブランデッドのない会社や商材がブランドを構築するにはどうすればいいのかということで、この本のようにブランディングの方法を伝えてくれるものがあります。
この本は経営者が読むもので、中間層から現場層が読むものではないと感じました。経営者には道筋を示すなにかが役に立つのに対して、現場層にはHow Toが役に立つためです。読者層が異なると、評価も異なるのだと感じます。
本書では、10年前の古いデータで優秀社員の定着率をあげる方法が示されていました。今でも大きく変化はないと感じます。
社員は、成長につながる取り組みを重視する傾向にあるので、1年後、3年後、5年後といったスパンでのキャリアアッププランを見せることが有効かもしれません。
P052 Chapter1 「ブランドストーリー」の秘密
元ネタを見てみました。2015年(平成27年)の中小企業白書の情報だと思います。
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H27/h27/index.html
白書によると、企業側の「第2-2-29図 人材定着に関して有効と認識されている取組」として上位5つは
1.賃金の向上(基本給・ボーナス)
2.興味にあった仕事・責任のある仕事の割当
3.休暇制度の徹底(週休2日・長期休暇)
4.雇用の安定化
5.労働時間の見直し
が、示されています。
一方、就業者側の「第2-2-30図 就業者から見た、人材定着に関する取組の有効性」として上位5つは
1.興味にあった仕事・責任のある仕事の割当
2.休暇制度の徹底(週休2日・長期休暇)
3.資格取得支援
4.雇用の安定化
5.職場環境への配慮(人間関係・ハラスメント対策等)
が示されています。
比較してみると、企業側は青色マーカーで示したとおり「働かせかた」に着目していることが見て取れます。一方、就業者側は青色マーカーで示した通り「働き方」、黄色マーカーで示した「自己の成長」、赤色マーカーで示した「働きやすさ」をバランスよく重視していることが見て取れます。
実際に定着率が高ければ、就業者側のアンケート結果にはならないのだと考えます。現実は、面白くない(成長実感の得られない)仕事が割り当てられており、休暇が自由に取得できず、このため自己成長のための時間も割くことが難しいので資格取得くらい支援してほしいと思っている、という結果の裏返しになったのだと考えます。また、B/Sを重視した経営が行われていない(≒目先だけの商売になっている)ため雇用に不安があり、昭和の雰囲気が支配する職場が改善されない(≒古株が長年居座っている)ため、職場に期待していないという結果が出たのだと考えます。
直近のバズワードで言えば、「静かな退職」、「リベンジ退職」として表れている現象です。成長実感が得られない仕事なので「静かな退職」スタイルの最低限の言われた仕事だけをする。そこに昭和の国全体が成長していたことを、自社の成長・実力と勘違いしたマネジメント側が長年居座っており働きにくいため「リベンジ退職」を選択する。このような動きが顕著になってきているのだと感じます。
ちなみに「静かな退職」は、仕事を面白くしようとしない就業者側にも問題があると感じています。仕事が面白く感じられるほどの基礎力がないため、学生時代の計算ドリルを嫌々解いている状態で留まっているのだと思います。仕事は与えられるものではなく、奪うものということを小さいうちから体感させる必要性を感じます。何でも楽で、自分の思い通りになり、お金の稼げる仕事などないという現実は知っておいた方がよいと感じます。
経営者の立場で読むと示唆に富んだ本だと感じました。