機会発見―生活者起点で市場をつくる

機能や性能による差が出しにくくなった現代では、デザイン思考の技法を活かしたやり方でビジネスチャンスを掴む必要があるのだと思います。

この本は、デザイン思考で使われるツールを「どの場面で、どのように使えばよいか」をわかりやすく解説している所に特徴があると思います。
実務書でビジネスエスノグラフィの方法やカスタマージャーニーマップの描き方を示しているものは少ないので、参考になりました。
また、日本ではIDEOとスタンフォード流のデザイン思考が主流のような気がしますが、もう一方のイリノイ流のデザイン思考が著者のバックボーンにあるところにも興味が持てました。

本書による定義は下記のように示してありました。

機会発見とは、「枠外の視点を探索して、統合・構造化によって新しい市場の可能性を創出する」アプローチだ。

また、分析的アプローチと機会発見アプローチの違いについての解説はわかりやすかったです。

分析とは英語でアナリシス(Analysis)といい、
・・・中略・・・
統合とは英語でシンセシス(Synthesis)といい、

図11の「発想のジャンプ台」は上手い説明だと感じました。
図17の機会発見プロセスの全体像はわかりやすかったです。

共感とはすなわち、自分とは異なる人間や、いままで知らなかった物事への興味・関心である。

アンラーンに関する説明も納得感がありました。

機会発見とは、自分たちの見立てを更新するための旅のような行為だ。旅といっても物見遊山的な「トリップ」ではなく、人生とも重なる「ジャーニー」だ。

図33の知性調査手法の比較もわかりやすかったです。

エスノグラフィに際しての態度は確かにと感じました。

「先生」は自分が正しく、相手に対してその正しさを伝える役割である。一方で、「弟子」は未知で未熟なため、先生から学び、物事を柔軟に呼吸するという立場だ。エスノグラフィ調査では、まさに弟子になったような学びの態度で臨み、見聞きすることを新鮮に受け止め、驚きとともに自分のものにしていくことが重要だ。

エスノグラフィの別の本で見たことがここでも出てきていました。

エスノグラフィ調査における観察の着眼点としてよく知られているのが、「AEIOUフレーム」である。覚えやすいフレームなので、フィールドワーク中に思い出して確認するのが良いだろう。
・・・
Activities(行動、行為)
Environments(空間、周辺環境)
Interactions(関係性、相互作用)
Objects(モノ)
Users(人)

デザイン思考のツールを一通り体験できるところが、この本のいいところだと思います。
機会あることに目を通したい本だと思いました。

投稿者: admin

ITエンジニアでキャリアをはじめ、SEやプロマネとして働いた後にマーケターとして新規事業開発などで働いていました。現在は経営戦略室で勤務しつつ、経営コンサルタントとしても活動しています。 詳細な自己紹介はこちらへ。