世界で最もイノベーティブな組織の作り方

イノベーションと組織について調べている時にこの本に出合いました。
アンテナを広げている所で、求める情報を得ることができるというのは本当のようです。

この本はイノベーションは、天才といわれる個人や特定の人物が起こすのではなく、チームや組織で起こすということを指摘している本になります。
この指摘は私もその通りだと考えており、職務発明でいくつか特許を取得した経験からもその通りだと思う点です。
大きな花火を一発上げるだけなら天才のひらめきで対応できると思います。
しかしながら、組織として連続的にイノベーションを起こしていきたいのであれば、それに見合った体制が求められるということを指摘しているのだと読み取りました。

その西堀栄三郎は1984年に出版された著書『石橋を叩けば渡れない』(生産性出版)の中で、「日本人は、個人としての創造性はある。これが組織になるとさっぱりになるのは、組織内に小姑のような人が居て色々とケチをつけたり混ぜ返したりするからだ。だから日本人に創造性を発揮させたければ個人を鍛えるよりも組織のあり様を変えなければダメだ」と指摘しています。

実際に、ヘイグループのこれまでの研究や観察からは、イノベーティブとされる企業であればあるほど、上下間での情報流通が活発に行われているという結果が出ています。そしてまた、この上下間の情報流通の量は、組織の構造や意思決定プロセスといった、いわば「ハード要因」よりも、むしろ企業風土や文化といった「ソフト要因」によって大きく左右されることもわかっています。

イノベーションを牽引するリーダーという観点からは、下記のような指摘が行われていました。
観客から見た望むべきリーダー像なのだと思いますが、裏を返せばそのような望むべきリーダーに出会ったことがないから求めているということだと感じます。

こういった一連のハリウッド映画が観客に提起しているのは、「権威は必ずしも正しいリーダーではない。リーダーとは危機意識を持って自ら動き出す人のことである」という批評であり、もっと突き詰めて言えば「自ら動け、それがリーダーだ」というメッセージです。

下記は生産性を求める既存組織の評価システムと、イノベーションを求めるプロジェクト組織の評価システムは、分割する必要があるという指摘だと思いました。
減点主義の生産性を追い求める部分と、加点主義でイノベーションを追い求める部分は、相容れないものともいえると思います。

この部分は、私の本業でも同様の評価が行われています。
イノベーションを求める経営方針と、生産性を求める中間管理職と、この時点でコンフリクトが生じているのに、最下層の個人に対して個人の問題として評価しないということが実際に起こっているので、腹に落ちる指摘でした。

ひとつは、課題優先型の仕事ばかりをやらせて、その中で活躍している人を長い時間かけて選り抜いていく、という現在の日本企業で主流となっている人材選抜のシステムでは、大きなイノベーションを実現できる人間を、知らず知らずのうちに淘汰してしまう可能性があるということです。

下記の指摘は、なるほどと思いました。

イノベーション普及の論理をつきつめて研究したエベレット・ロジャーズ(*82)は、イノベーションが普及するスピードを決定する要因として、以下の五点を挙げています。①相対的優位性イノベーションが、これまでのものよりもよいと知覚される度合い。②両立可能性既存の価値観や過去の体験に対して、イノベーションが一致している度合い。③複雑性イノベーションを理解したり使用したりすることの容易さの度合い。④試行可能性たとえ小規模であっても、イノベーションを採用決定前に試すことのできる度合い。⑤観察可能性イノベーションのもたらす結果が他人の目に触れる度合い。

特にロジャーズは、膨大な量の事例研究から、①の「相対的優位性」と②の「両立可能性」が、イノベーションの普及スピードを左右する最も重要な特性だということを明らかにしています。

この部分はあまり意識していませんでしたが、リーダーとしてあらかじめ準備しておくべきことだと認識できました。

グローバル化の推進、企業価値の拡大、生産性の向上、売り上げの成長、そしてイノベーションの実現。多くの企業において「ビジョン」として掲げられているこれらの標題について、では「Why=何のために?」と問われて共感できる「回答」を提示できる組織のリーダーはどれほどいるのでしょうか?

下記は、上記でも別の観点から指摘されていましたが、生産性を重視する既存事業には効果を発揮するが、イノベーションを評価する際には役立たないという指摘だと感じました。

イノベーションの実現という文脈で人事評価制度を検討した場合、まず真っ先に指摘しなければいけないのが「目標管理制度=MBO」の限界です。現在、MBOは多くの企業で採用されており、評価制度のデファクトスタンダードになった感があります。しかし、この評価手法は漸進的な改善活動の成果を測定するには適用できますが、「イノベーションの実現」のように不確実性を高度にはらんだ営みの測定には適用できません。なぜならば、イノベーションは予定調和しないからです。

連続的にイノベーションを起こすには、やはり一人のスーパースターを待ち望むのではなく、組織的に対応していくことが近道なのだと感じます。

投稿者: admin

ITエンジニアでキャリアをはじめ、SEやプロマネとして働いた後にマーケターとして新規事業開発などで働いていました。現在は経営戦略室で勤務しつつ、経営コンサルタントとしても活動しています。 詳細な自己紹介はこちらへ。