売上につながる「顧客ロイヤルティ戦略」入門

積読していたものを読みました。
都内のG.Wは静かなのでのんびりすることが好きな私にはうれしい環境です。少し風が強いのが困りものですけど。

マーケターとして働く私には、うんうんと思いながら読める本でした。
形だけの顧客満足を追いかけるのではなく、NPS等の方が良いことを示していました。いずれにしても、行動観察、エスノグラフィ、カスタマージャーニー、等の私には身近なツールで説明されていたのでわかりやすかったです。
今シーズンに読んでいる中でも好きな本の一つになりました。

売上が高い顧客、イコール、ロイヤルカスタマーとするのは、大変危険な間違ったとらえ方である。顧客が「ずっとこの企業から買い続けよう」と思ったり、親しい人にはおすすめしたいと思い、実際にそのような行動を起こしている時に初めてロイヤルカスタマーであると言える。

ロイヤルカスタマーの定義を明確にしていくことが良いという指摘だと感じます。日本企業においては、お偉方の贔屓客や声の大きなクレーマー客をロイヤルカスタマーとして取り扱い、歪んだ対応を取っている場面をよく見るためです。

満足は顧客が言語化できる期待に応えることで作ることができるが、愛着を作るには顧客自身もわかっていないような潜在的なニーズに応え、より大きな満足や感動を提供する必要がある。

ロイヤルカスタマーへの育成の有する潜在ニーズに気づいていけるかが、現代の企業に求められている変化対応力になっていると感じます。
「図表0-7.顧客ロイヤルティとは?」はわかりやすかったです。

人の行動は目的よりも目標に最適化されやすい。本来は目的達成度をチェックする指標として目標があるにもかかわらず、いつしかその目標達成のためであれば目的をも逸脱した行動をとってしまうことがある。

上記は目標と目的が入れ替わってしまうことを指しているのだと感じます。

ロイヤルティ指標決定後には、カスタマージャーニーマップの作成に入る。カスタマージャーニーマップとは、顧客と企業との接触およびその時の感情を一連の流れとして可視化することを指す。このステップにより、自社が顧客に提供している価値を「顧客視点から」理解することができる。

顧客ロイヤルティの創出に取り組むときには、企業側の視点に立った部門最適ではなく、顧客の視点に立った全体最適が求められる。その際に、顧客の経験をストーリーでとらえるツールが、カスタマージャーニーマップだ。 カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品・サービスを購入・利用する際に、その企業との各タッチポイント(接触点)で発生するやりとりや、顧客の期待・感情・行動をプロセス化し、一連の流れとしてとらえることを指す。一連の流れは、いわゆる「旅(ジャーニー)」のようにとらえることができるため、この言葉が使われている。

ジャーニーマップはあくまでカスタマーエクスペリエンスを考えるうえでのワーキングツール(手段)であり、ロイヤルティ創出の仕組みの一要素にすぎない。

上記は要注意点だと思います。ツールとして便利なジャーニーマップも、いつの間にかマップを作ることが目的化している場面に良く出くわします。

カスタマージャーニーマップは近年日本企業にも広まり、一般化してきたと言える。しかし、実際に取り組んでみたものの、うまくいかないという声をよく聞く。状況を分析すると、失敗するのには以下の四つの理由、「あいまいな目的設定」「企業視点」「課題の羅列に終始」「ビジネス指標との相関があいまい」がある。

上記は上手く分類されていると感じました。結局のところ「カスタマージャーニー」であるにも関わらず、プロダクトアウト的な企業側の視点で考えているために発生する失敗だと感じます。また、よくある失敗は上司や更にその上が理解できない場面だと感じます。

相手の立場に立つとはこのように「相手から見た自分の姿」を頭の中に思い描いて、そこから相手の気持ちを感じ取ることなのである。本当の意味で相手の立場に立つことができれば、相手から見た時に自分達がどうあるべきなのかを議論できるようになるため、そのままアクションにつながりやすい。

上記の説明は秀逸だと感じます。顧客目線に立つとは、顧客の目線にあわせた売り手の目線のことではなく、顧客として外界の世界を見た目線という、当たり前だが殆どの人が勘違いしていると感じる部分が説明してあり、感心しました。

ロイヤルティとは、顧客が対象企業に好意や愛着を持って、購入し続けたり、口コミをしてくれることだと定義した。ここでは、その実態に迫るべく、「ロイヤルティ(好意度)」と「収益性」の二軸に分解して分析していく。

上記により軸を切ることで、より詳細に分析することが可能だと感じます。

調査のサマリーデータをレポートで読むよりも、実際の顧客に触れることのほうがはるかに深く、共感をともなって顧客を理解することができる。とくに行動観察やエスノグラフィーと呼ばれる現地調査によって顧客を臨場感をもって理解できれば、その後の改善活動の活力になる。

顧客課題の要因を分析する際に重要なのは、「顧客の”改善意見”ではなく、”行動・認知”などの事実を重視する」ことである。

エスノグラフィで行動に着目せよということだと感じます。

現在のように色々な製品・サービスが満ちあふれ、人々のニーズも多様化・複雑化する状況では、顧客が言語化できるレベルの情報だけでは差別化が難しくなっている。この状況を打開するためには、顧客の意見ではなく、顧客行動という事実データを集めて分析することで、答えは自分たちで導き出していくしかない。

一口に「共感」といっても、顧客の感情を理解して一緒の気持ちになる「同情(英語では”Sympathy”)」と、より深く感情移入し、顧客の感情を自分のものとして感じる「共感(英語では”Empathy”)」の二種類がある。仕事において、顧客に対して同情することはあっても、共感の境地に達することは実は難しい。

経営陣に提案する際には、データの信頼性、収益インパクト、直感への働きかけの三点が重要になる。とくに収益インパクトは合理的な意思決定を行ううえで最も重視されるため「ロイヤルティを上げたら収益が上がる」という根本命題の証明が必要になる。

「図表7-4 顧客志向企業チェックリスト」は面白いチェックだと感じました。

G.W後半戦のはじめは、有効に時間を使って楽しい本を読むことで気分転換ができました。
さて、論文の骨子でも組み立てようと思います。

投稿者: admin

ITエンジニアでキャリアをはじめ、SEやプロマネとして働いた後にマーケターとして新規事業開発などで働いていました。現在は経営戦略室で勤務しつつ、経営コンサルタントとしても活動しています。 詳細な自己紹介はこちらへ。