D2C「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略

マーケティングの観点で、今年読んだ本の中ではかなり好きな部類の本でした。
理由としては、B2B起点の発想ではなく、消費者に対する世界観の提示とデジタルテクノロジーでビジネスを発想しているという点が好感を持ったためです。

4Aから5A、マーケティングファネル型は死んだ、マーケティングミックス(4P)から4Eのくだりは、頭の整理に役立ちました。

まずは、定義の部分に興味を持ちました。具体的な中身には触れませんが、タイトルベースで書いてみました。伝統的なブランド企業との対比が示されており、視点や切り口の違いがわかりやすいと感じました。
また、1-3のタイトルで示された内容は参考になりました。確かに「モノからコト」という状態から「コト付きのモノ」が、現時点のD2C企業の成功パターンになっている感じを受けます。

1-2 D2Cの定義
1.「ものづくり屋」ではなく「テック企業」である
2.「間接販売」ではなく「直接販売」する
3.「高価格化」ではなく「低価格化」を志向する
4.「着実な成長」ではなく「指数関数的成長」を遂げる
5.「プロダクト」ではなく「ライフスタイル」を売る
6.「X世代以上」ではなく「ミレニアル世代以下」をターゲットとする
7.「顧客」ではなく「コミュニティ」として扱う

P20-31 1章 D2Cが生んだパラダイムシフト

マーケターとしては、ペルソナを想定するうえで下記が参考になりました。また、参考文献としてA.T.カーニーの「未来の消費者像:「物質的な豊かさ」から「つながりや影響力」を重視する時代に」というレポートが示されており参考になります。
個人的には、アメリカと日本では世代の定義に数年のずれがありますが、私から見て若手の方はソーシャルやつながりといったことを重視しているというのは、その通りだと感じます。ビジネス側としては、消費者にあわせた商品・サービスを提供する必要があるので、ターゲット像を明確にするのに役立つ部分だと感じます。

本物へのこだわり
D2Cブランドがここまで世界観を重視しているのは、主要ターゲットであるミレニアル世代(1981~1997年生まれ)やZ世代(1998~2016年生まれ)が、世界観の訴求に強く共感するからだ。彼らは、消費に対してそれまでの世代とは違う価値観を持つ。

P53 2章 「機能」ではなく「世界観」を売る

「図4-1 D2Cブランドの複層性」は、伝統的なブランドとの比較において、その通りだと感じました。消費者に対するアプローチというか、仕掛けや働きかけに違いがあるように感じます。
「図4-6 ループ型のフレームワーク」は、現在並行して読んでいる本の内容と掛け合わせて、面白い概念にできそうだと感じます。

D2Cに取り組んでいる、もしくは取り組もうと思っている企業や担当者の方が読むと、少し肩透かしな感じがするのだと思います。理由は、外から見た事象について書いてある本だからです。内から見た泥臭い部分は書いてありません。内から見た部分は、コンサルティングとしてビジネスをするということがあるのだと思います。
何事もそうですが、概念を理解すればそのあとは各自で検討できることなので、D2Cの概念を理解できる本として活用すれば、有意義だと感じます。

最後に、モノクロの文字と写真の本だと思っていると、様々な場面でカラーの文字や写真が使われているのが少々驚きでした。伝統的な出版社ではないのと、意匠という意味でデザイン関連の部分があるのと、IT関係の部分があるのでカラーが多いというのがあるのかもしれません。
やはり、イメージや概念を伝える際はカラーが有効活用できるということだと感じます。自らのプレゼンテーションにも活用できる部分だと感じました。

投稿者: admin

ITエンジニアでキャリアをはじめ、SEやプロマネとして働いた後にマーケターとして新規事業開発などで働いていました。現在は経営戦略室で勤務しつつ、経営コンサルタントとしても活動しています。 詳細な自己紹介はこちらへ。