「カスタマーサクセス・プロフェッショナル」は、カスタマーサクセスの実践的な解決策を示した本でした。
読む順番としては、「カスタマーサクセスとは何か」で雰囲気や言葉使いを学び、「カスタマーサクセス」でそもそもの歴史を学ぶ。そのうえで、「カスタマーサクセス・プロフェッショナル」を読むと理解を深めやすいと思います。
この本の良い点は、しっかりとした引用元が掲載されている点です。よくある成功した経営者の1度限りの事例ではなく、再現性がありそうなところが参考になります。
・デロイトの調査によると、カスタマーサクセス(CS)を戦略的優先事項とする企業は、そうでない企業に比べて業績の伸びが大きく、契約更新率が2桁パーセント改善した企業も約2倍にのぼる(3)
P22 第1章 カスタマーサクセスマネジメント
KBCMテクノロジーグループが2019年に発表したSaaS調査報告書では、新規顧客を相手に1ドルの年次定期収益(ARR:Annual Recurring Revenue)をあげるコストは1.34ドルであるのに対し、カスタマーを相手に追加売上をあげるコストはわずか50セントであった(図1.5)(21)。
P36 第1章 カスタマーサクセスマネジメント
カスタマーのリテンション率がわずか5%上昇するだけで、利益が25%から95%上昇することを、企業が確実に理解し始めたのである。(24)
P42 第1章 カスタマーサクセスマネジメント
マーケティングでよく語られる、新規客を獲得するのに必要なコストと既存客を維持するのに必要なコストの話や、既存客のチャーンを●%減らすと利益が●%上昇するといった話と同じだと感じます。
カスタマーサクセスや保守・運用に関わる方々には痛い指摘だと感じました。私自身でいうとコンタクトセンターの仕事に関わっているときのことを思い出しました。
カスタマーはプロダクトに対してフィーを支払っているのであり、あなたに気持ちのいい対応をしてもらうためではない。彼らが期待するのは、費用対効果をより上げるためにカスタマーサクセス担当者が取り組んでくれることである。
P93 第4章 変わり続けるビジネス界で求められるカスタマーサクセスマネジャーのスキル
下記も興味深い指摘です。当たり前と言えば、当たり前ですが利用者からの紹介が購買決定に影響しやすいという指摘です。マーケティング領域でいえば、インフルエンサーからの紹介やファンマーケティングの文脈で語られることが多い話だと感じます。
インフルエンサーの影響力を活用しやすいBtoCの商売ではなく、BtoBにおいても紹介が効果を発揮するという数値が興味深いです。もちろん実務上では、形態や力関係は別として紹介営業が効果的というのは実感もあるところです。
『ハーバード・ビジネス・レビュー』の調査でも、84%のB2Bバイヤーが、推薦や紹介から購買プロセスを始めることがわかっている。そして、推薦が何らかのかたちで影響したB2Bの購買決定は90%以上なのだ。(1)
P260 第12章 収益を拡大する
最後の章のカスタマーサクセスに関わる方のキャリアに関する記載も興味深かったです。ナインボックスやスキルマップなどを活用しながら、育成していくというところは人事系に関わる方であればなじみ深い話だと感じます。
この本は先頭から読んでいくのもよいですが、2回目以降はピンポイントで特定領域のヒントを得たいときに読むと効果を発揮しやすいのだと感じます。