B to Bマーケティング偏差値UP

積読本を読み終えました。著者の考えは、私が考えているマーケティング範囲と類似しており、読みやすく、また参考になりました。
私の表現でいえば、マーケティング戦略とマーケティング手法は違うということを示した本だと思います。

リード獲得のための展示会ですが、必ずしも下記で示されているような目的で出展していないことが多いと感じます。
大企業のブースに訪問すると、競合他社に対して頑張っていることを見せる場なのだと感じることが多いです。一方、中小企業のブースでは、自社の商材を知ってもらうことや商談することに比重を置いていることが多いと感じます。
いずれにしても、展示会出展の目的を明確にし、終了後にKPIとの比較を行うことや、その後のフォローまでデザインしていることが求められていると思います。

しかし、マーケティングの全体設計の基づくと、展示会の目的は「ターゲット企業に所属する個人の情報を収集すること」にフォーカスすべきです。
(中略)
展示会出展でリードジェネレーション以外の目的を持たせると、お金ばかりかかり、おかしな評価をしてしまいます。

P38 第2章日本企業の実情

下記は、限られたリソースのフィールドセールスをどこに使うべきかという議論だと感じました。旧来は、アンゾフの言う「市場浸透戦略」の領域で食べていけたが、今後は「新製品開発戦略」「新市場開拓戦略」の領域に出ていかないと成長はないという指摘をおこなっています。
私も営業の力が強い会社に勤めていたことがありますが、まさにこの罠に陥っていたと考えています。人的リソースが限られ、厳しい予算がついている営業が、確度・確率の低い新領域に出ていくはずがないのです。まさに笛吹けども踊らずだと感じていました。また、こういった会社の場合、マーケティングを軽視しているので、新領域に出ようにもうまくいかない悪循環が繰り返されているとも感じていました。

予算達成意欲の高い営業が通う先は、既存顧客の既に取引がある部署です。確実に数字がつくれるのはそこだからです。
(中略)
しかし、新製品や新サービスは、今までと違う事業所や部署に行って、会ったことのない人に会わなければ売れないものです。最初は空振りも多く、常に無駄が存在します。予算を達成できない期間が長くなります。もし企業がそこに配慮しなければ、誰も新製品を売らないでしょう。

P107-108 第3章 日本が遅れた理由、追いつけない理由

P189の「図表6-1 モノ売りとコト売り」は、とても素晴らしい図だと思いました。両者の購買プロセスの違いを明確に表しており、役割分担やマーケティングが必要になる理由がわかりやすく示されていました。

P217の「図表7-2 売上の方程式」もわかりやすかったです。
「売上=案件数×決定率×案件単価」と示しており、案件数をさらにブレークダウンして説明していました。
コンサルタントとして活動しながら感じることは、大きくとらえ戦略を立てますが、実行においては小さく整理・分類し、どのレバーを操作すれば結果が跳ねるのかを追うことで結果がでるということです。最上位の方程式はわかりやすいですが、なぜ?やどうすれば?に対する答えを導くことができないと考えています。

デジタルマーケティング手法を求めている方には、参考にならない本だと思いますが、マーケティング戦略を経営戦略と整合させたい方には、大変参考になる本だと思います。B2Bのマーケティング本は、ほとんどMAやCRM、SFA、コンテンツ作成などの手法ばかりだと感じていたので、戦略という観点でよい本に出合えたと思いました。

一方で、この本の主張するマーケティングの知識を全員に持ってもらおうというのは、なかなか困難なことだと感じます。イメージ的には、花王、サントリー、リクルートのような企業を目指すということかなと感じました。

投稿者: admin

ITエンジニアでキャリアをはじめ、SEやプロマネとして働いた後にマーケターとして新規事業開発などで働いていました。現在は経営戦略室で勤務しつつ、経営コンサルタントとしても活動しています。 詳細な自己紹介はこちらへ。