事業創造のロジック-ダントツのビジネスを発想する

積読本を読んでみました。
いつも以上に慌ただしい日常を過ごしていたので、よい息抜きになりました。

この本は、成功企業のビジネスモデルを分析した本でした。読みやすくさくさく読み終わります。
読みながら印がついている所を振り返ってみると

ビジネスモデル=経営者の頭の中にある「事業の構造に関する意図」をまとめた設計図

一般的には「設ける仕掛け・仕組み」と捉えているビジネスモデルを、経営者の暗黙知がビジネスモデルだと指摘しています。確かに創業者の場合はその通りなのだろうという気がしました。

ビジネスモデルキャンバスの概念の次に、バリュープロポジションデザインが公表されてメジャーになった考え方が下記で示されています。

カスタマー・バリュー・プロポジションという概念があって、顧客価値の提供で重要なことは、消費者にとっての「解決すべきジョブ」を明確にすることから始まるというふうに説明されます。

図表1-1 Customer Value Proposition(CVP)
・ターゲット顧客の設定
・解決すべき「ジョブ」:ターゲット顧客が抱えている重要なニーズ、あるいは重要な問題の解決。
・提供するもの(価値):問題を解決するもの、あるいはニーズを満たすもの。この場合、何を提供するかだけでなく、どのように提供うるかも含まれる

上記の図表は、HBRのクリステンセンさん等の論文の引用で示されていました。
CS(顧客セグメント)に対する、VP(価値提案)なので、ターゲット顧客のことをよく知る必要があるということだと感じます。

キンドルの成功は、ビジネスモデルを設計するうえで重要な要素は何かということを教えてくれます。チェックポイントはいろいろあるわけですが、それを集約していくと、特に重要なことを2つにまとめることができます。1つは、「顧客にとっての魅力を高めること」です。もう1つは、「ライバルが追随できないようにすること」です。

上記はマーケターとして常に考えていることなので、その通りだと感じます。

経営学には「ノイジーマイノリティー」という言葉があります。どういう意味かというと、お客さんの声を聞くのはとても重要だという考え方は正しいとしても、あるお客さんから届いた声が全体の声と一致しているかというと、そうではない。限られたお客さんを相手にする商売なら個々の意見のすべてが重要でしょうが、大衆的な商売はそうとは限りません。

これは私の本業でもよく出会う場面ですが、一部の声の大きな顧客に引っ張られる状況を指しています。マーケターとして気にするのは「声の大きなクレーマー」よりも「サイレント・クレーマー」の方です。その存在に気づくことが難しく、不満に思っていることを聞き出すことも困難であるというのがその理由です。
日本では、いまだに「顧客=神、王」といった考えが根付いている気がするので、様々な場面で内部のコンフリクトの原因になっているように感じます。

全体の整合性が重要だということや、全体の模倣困難性をどうつくるかとかいう議論は重要です。しかし、変えられるのは部分です。だから経営者は、競争優位を実現するためには全体の整合性が重要だということを言うだけではなくて、全体の整合性を意識しながら、「部分」への投資や「部分」の改革をどう実行していくかを考えなければなりません。

上記は経営者としての困難さを指摘していると思います。ゼロ(0)から1を生み出すのであればすべてを変えることができますが、既に1以上になっているものを変える場合は全てを変えることはできないということだと思います。だからこそ経営者の意思決定が重要で、どういう結果を求め、それを獲得するのに最善の手段は何かを考え、何かを変えることで手を打つということを常時しなくてはならないのだと感じます。

本書は企業分析の方法の一つを一通り示しているのだと感じました。
様々な軸で分析することが学者さんとしては大切ということと、企業家としては結果として成功することが大切ということを意識して読むとよいと感じました。

投稿者: admin

ITエンジニアでキャリアをはじめ、SEやプロマネとして働いた後にマーケターとして新規事業開発などで働いていました。現在は経営戦略室で勤務しつつ、経営コンサルタントとしても活動しています。 詳細な自己紹介はこちらへ。