デザイン思考の先を行くもの

建築に関するデザインをベースにした本でした。
建築関係なので、IDEOとスタンフォードのデザイン思考というよりは、イリノイ流のデザイン思考に似ていると思いました。

建築に関する分野もあるので、ハーバードはやはり大きな大学なのだと思いました。芸人のパックンも確かハーバードで宗教学?を修めていたと思います。総合大学だと色々なキャラクターや文化的背景の方がいて、面白いと思いました。

この本では、0から1を生み出す部分は自己中心の発想で生み出すもの。仮説創造と表現されていました。
デザイン思考は1から10を仮説検証で育てるものとしています。

デザイン思考のプロセスをPDCAに当てはめて説明している部分がありました。
面白いと思う反面、繰り返しのサイクルを無理やりPDCAに当てはめていると感じました。個人的な感覚では、イノベーションを生み出す場面(この本でいう1から10になる場面)は、無理やり当てはめるならOODAループの方がフィットしているように感じます。
著者の方は、デザイン思考=仮説検証=アイデアの改善という発想だと思います。改善なのでPDCAがフィットすると考えているのだと感じました。

下記のデザインに関する説明は、参考になりました。特に日本では、デザイン=意匠ととらえている方がまだまだ多いので、よい説明だと思いました。

つまりデザイン力とは問題解決力のこと。あくまで「問題を発見し、解決の糸口を示す」能力なのである。

155/954 問題解決としてのデザイン

下記は私もその通りと思いながら読んでいました。ブレストなどを行っていても、結局個人の発想力やひらめきに依存して、周りの人は参加した気分を味わっているだけと感じてきたからです。
慶応のSDMの資料でよく見る、昔のハーバードで調査した跳ねたイノベーションを生み出すには様々な分野の専門家が関わったほうがよい(同じ分野の専門家が集まると平均的なアイデアに収まる)とも整合しているように思います。

それは、世の中を変えるような革新的アイデアは、ロジックやマーケティングからは決して生まれてくることはなく、ある専門性を持った個人が、異分野の知識に触れた時、そこはかとなく自身の専門分野の話に「見えてしまった」という極めて個人的な「見立てる力」こそが重要なのではないか?という仮説を持っているからである。

386/954 ウリポ(OULIPO)の見立てる力

このふたつの事例から、複数人でアイディエーションする過程を考える。すると【革新したいこと】に対して、その要素とは関係のない【異分野の専門知識】を掛け合わせることで、思いもよらなかったジャンプが生まれていることがわかる。
(中略)
つまり、その場所には複数人いるにはいるのだが、結局は個人作業を行うことになる。アイデアというのは何人かの脳に同時に思い浮かぶことはない。結局最後は誰かひとりが思いついているのである。

618/954 発想と思考プロセス

コンピュータなどの発達で、記憶力は人間の能力をはるかに超える状態にあるので、知識量を増やすことの重要性が低下していると指摘しているものが増えているように感じます。
一方でこの本では、「知識量がすべて」と指摘しています。
私もこの指摘はその通りだと感じています。結局のところ、個人の頭の中に専門性というフィルターを通して蓄積された知識が、何かの刺激を受けてアイデアの種を紡ぎだすのだと感じます。
多くのブレストなどが不毛な結果に終わる原因も、専門家でない人が集っているだけだからと感じます。日本ではタレントマネジメントがまだまだ遅れていて、どこに何の専門家がいるのかが人づてにしか探せないので、スピード感が出ないのかもしれないと考えました。

デザインの勉強とは、極端に言えばこの引き出しの量(ケーススタディ)を増やしていく作業であり、知識量こそがすべてなのである。

712/954 EXERCISE1:ロールプレイング法

結構重たい本で時間がかかりそうと思っていましたが、さくさくと短時間で読み終えられる本でした。

投稿者: admin

ITエンジニアでキャリアをはじめ、SEやプロマネとして働いた後にマーケターとして新規事業開発などで働いていました。現在は経営戦略室で勤務しつつ、経営コンサルタントとしても活動しています。 詳細な自己紹介はこちらへ。